この記事のデータ
女装カルチャー白書2026(627件/2026年7〜8月)
第二回 女装国勢調査(1,534件/2025年11〜12月)
総務省の調査・国勢調査の統計とも比較
細かい計算と注意点は、記事の最後にまとめています
2026年の夏、女装カルチャーについての大きな調査結果が、立て続けに出てきました。
ひとつは、女装イベント「プロパガンダ」の「女装カルチャー白書2026」。627件の回答をもとに、年齢や住んでいる場所から、始めたきっかけ、困りごとまでをまとめたものです。
もうひとつは、聖装新聞の「第二回 女装国勢調査」。2020年の第1回から5年ぶりで、1,534件の回答が集まりました。最終報告書も近く公開されるそうです。
界隈を数える調査が2つも出てきたら、並べたくなるのが人情です。並べました。
住んでいる場所は、まったく違う
まず、回答者が住んでいる地域から。
| 地方 | 白書2026 | 女装国勢調査 |
|---|---|---|
| 関東 | 約60% | 41.6% |
| 近畿 | 約11% | 19.6% |
| 中部 | 約15% | 19.2% |
| 九州・中四国・東北・北海道 | 約12% | 18.4% |
白書は関東に6割が集中。女装国勢調査は近畿と中部が厚い。
理由はシンプルで、調査した側の「地元」が違います。プロパガンダは東京のイベント、聖装新聞は名古屋のイベントともつながりの深い媒体です。アンケートは主催者の声が届く範囲に広がるので、東京の調査には東京の人が、名古屋の調査には名古屋の人が集まります。
つまり、2つの調査はそもそも違う集団を数えています。ここが出発点です。
なのに、年齢はほぼ同じだった
ところが、年齢を並べると話が変わります。
どちらも40代が一番多く、30代と40代がほぼ同じ割合。違う地域で、違う時期に、違う主催者が集めたのに、年齢の形はそっくりでした。
違う集め方で同じ結果が出たなら、それが界隈の本当の姿だ!
……と言いたいところですが、そうは問屋が卸しません。
白書で「女装の情報をどこで得ているか」を聞いた設問では、Xと答えた人が94.4%。ほぼ全員です。そしてどちらの調査も、回答はオンラインで集めています。
2つの調査は、違う集め方に見えて、どちらもXを通じて回答を集めていたわけです。
Xの年齢と比べてみる
そこで、Xを使っている人の年齢構成を推計しました。
総務省の調査には、年代ごとのXの利用率が載っています(20代 73.4%、30代 67.7%、40代 57.0%、50代 40.2%、60代 24.8%)。これに各年代の人口の比率を掛ければ、「Xを使っている人は、どの年代が何割か」が出せます。

灰色の点線がXユーザーです。
2つの調査の線は、日本の人口ではなく、Xユーザーの線に沿っています。60代が少ないのも、60代がそもそもXをあまり使っていないからです。
身も蓋もない結論ですが、私たちが見ている「女装界隈」の年齢は、ほぼ「Xの年齢」でした。
それでも残る、30〜40代の厚み
ただし、Xの線と違うところが一か所あります。
30〜40代が占める割合は、Xユーザーが47.5%。対して白書は53.8%、女装国勢調査は52.7%です。どちらの調査も、30〜40代だけがXより一段高くなっています。
平均年齢はXユーザーが42.0歳、白書が41.0歳、女装国勢調査が42.7歳で、ほぼ同じ。なので「女装界隈は年齢が高い」のではありません。年上でも年下でもなく、真ん中に人が集まっているのです。
Xの影響を差し引いても、東京でも名古屋でも同じように残る。これは調査の集め方ではなく、界隈そのものの特徴です。
みんな、けっこう歴が長い
その30〜40代の人たちは、いつから女装をしているのか。
白書には、女装を始めてからの年数を聞いた設問があります。6年以上が55%、11年以上でも35%。古参揃いです。
この「女装歴」を調査時点の2026年夏から逆算すると、「いつ始めたか」が見えてきます。区分ごとに年数の幅が違うので、1年あたりの割合に直して並べました。

一番高いのは、2021〜23年頃に始めた人たち。コロナ禍です。
古い時期ほど途中でやめた人が抜けるので、本来は「最近ほど高い」右肩上がりになるはずです。ところがこのグラフは、コロナ禍の区分だけが飛び出して、直後の2024〜25年頃にいったん下がっています。やめた人が抜けるだけでは、このへこみは生まれません。
家にいる時間が増えて、通販で服を買って、自宅で試す。白書では女装する場所の1位が「自宅」(72.0%)、女装用品を買う場所の1位が「Amazon」(63.7%)です。外出自粛中の条件と、ぴったり噛み合います。
コロナ禍デビュー組、いました。
ちなみにこのグラフには、2010年前後の男の娘ブームの時期も重ねてあります。ブームの頃に始めた人たちの棒は、1年あたり2.0%。コロナ禍の4分の1ほどです。
あのころ「男の娘」に心をつかまれた人たちは、今どこにいってしまったのでしょうか? 卒業したのか、Xから離れたのか、それとも「11〜20年」という大きな箱の中で、ならされて見えなくなっているだけなのか。
ブームの頃に始めた方、まだここにいたら教えてください。
白書の方が若く、女装国勢調査の方が年上寄り
もう一度、図1に戻ります。
2つの調査を比べると、白書は20代が22.4%、50代が16.2%。女装国勢調査は20代が17.6%、50代が21.9%です。平均年齢も、女装国勢調査の方が2歳近く上になります。
東京の方が若い人が集まりやすい、というのはひとつの説明です。ただ、もうひとつ気になる違いがあります。白書はクラブイベントから、女装国勢調査は新聞から回答を集めていることです。
世の中一般では、新聞を読むのは年齢が高めの層だと言われます。やはり新聞媒体だと、女装界隈でも年齢層は上がるのでしょうか?
ちなみに女装国勢調査は、2020年の第1回と比べて20〜30代が減り、50〜60代が増えています。5年分、山がそのまま年上側にずれた形です。聖装新聞も「高齢化の兆し」と書いています。
配偶者がいる人は、少ないのか
女装国勢調査には、配偶者の有無を聞いた設問もありました。「配偶者あり」は37.0%です。
これが多いのか少ないのか。同じ年齢構成の男性ならどうなるかを、2020年の国勢調査(こちらは政府の方)の年代別の有配偶率で計算してみました。すると、52.8%になります。
| 配偶者あり | |
|---|---|
| 同じ年齢構成の男性(計算値) | 52.8% |
| 女装国勢調査の回答者 | 37.0% |
| 差 | −15.8ポイント |
年齢をそろえると、配偶者がいる人は3割ほど少ない計算です。
この結果について、ここでは深く言及はしません。ただ、あなたの周りの女装仲間は、配偶者がいる人の方が多いですか?
まとめ
2つの調査を並べて分かったことは、大きく3つです。
- 住んでいる地域は、集めた人によってきれいに偏る
東京のイベントが集めた白書は関東が約6割、名古屋とつながりの深い聖装新聞が集めた女装国勢調査は、近畿・中部が厚くなっていました。 - Xユーザーと比べると、30〜40代が厚め
年齢の形はほぼXユーザーと同じ。それでも30〜40代だけは、どちらの調査でもXより一段多くなっています。 - 配偶者がいる人は、同じ年齢構成の男性よりごく僅かに少ない
あくまでごく僅かですよ。
そして、Xを通じた調査には映らない人たちもいます。
60代が少ないのは、60代の女装者が少ないからではなく、60代がXにいないからです。以前集計した「女装サロンに行った回数」の投稿にも、X以前から続く老舗の名前が挙がっていました。界隈には、Xが生まれるずっと前からの歴史があります。
ひとつの調査だけでは、界隈の全体像は分かりません。誰が、どこで、どうやって数えるかで、形が変わるからです。だからこそ、複数の調査が出てきて重ねて見られるようになったのは、界隈にとってうれしいことです。
最後に、界隈を数える貴重な調査を実施し、その結果を公開してくださった女装イベント「プロパガンダ」(女装カルチャーガイド)と聖装新聞のみなさん、そして調査に回答したお一人おひとりに感謝します。誰かが手間をかけて数えてくれたからこそ、こうして並べて眺めることができました。
集計のしかた
問い
- 東京系と名古屋系の2つの女装調査は、どこが同じで、どこが違うのか
- その違いは、界隈の特徴なのか、調査の集め方によるものなのか
データ
- 女装カルチャー白書2026(女装カルチャーガイド):2026年7月22日〜8月25日、オンラインフォーム、627件
- 第二回 女装国勢調査(聖装新聞):2025年11月末から約1か月、オンライン、1,534件。数値は紙面から引用
- 総務省「令和7年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」:2025年12月、13〜79歳の1,800人
- 国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」表6-22(2020年国勢調査)
処理
- 地方区分:白書の都道府県別の結果を、女装国勢調査の地方区分に合わせてまとめ直した(三重・山梨などの区分は推定)。白書には海外・無回答が約2%ある
- Xユーザーの推計:総務省調査の年代別の回答者数(人口比で割り付けられている)×年代別のX利用率
- 年齢構成の比較:3つとも20〜60代の合計を100%として計算し直した。白書の60代には65歳以上を含む
- 平均年齢:各年代の中央の年齢(20代なら25歳)を使った概算
- 女装を始めた時期:女装歴を2026年夏から逆算し、区分の年数で割って1年あたりの割合にした。「覚えていない」「回答したくない」は除いた。「1〜2年」は2年分として計算
- 有配偶率の期待値:女装国勢調査の年齢構成×2020年の男性の年代別有配偶率。回答者は全員男性と仮定
見えていないもの
- 3つの調査はどれもオンライン・X経由が中心で、Xを使わない人はほとんど映らない
- 総務省の「利用率」は、見るだけの人も含む。アンケートに答えるような活発な人の年齢構成とは違う可能性がある
- 比べたXユーザーは男女合計。回答者が男性に寄っていることは反映していない
- 白書と女装国勢調査は、調査時期が約8か月ずれている
- 女装歴のデータは、途中でやめた人ほど映りにくい。また、始めて数年の熱心な時期の人ほど回答しやすい可能性がある
- コロナ禍デビューは白書の回答からの推定で、外部データでの裏付けはない
- 女装国勢調査の回答者の性別の内訳は分からない
- 有配偶率は2020年の国勢調査と比べているため、5年分のずれがある
個人情報の扱い
- この記事では、公開されている集計値だけを使っています
更新履歴
- 2026-10-02 公開